NO.9 小畜(しょうちく="Small Accumulating"):しばしの停止、蓄えをつくるべき時

"Small Accumulating"sb



小畜(しょうちく="Small Accumulating")


 6th:陽:上9(Upper9)
 5th:陽:95
 4th:陰:64
 3rd:陽:93
 2nd:陽:92
 1st:陽:初9(First9)

 ※上9(Upper9)、95、64、93、92、初9(First9)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。 

小畜(しょうちく="Small Accumulating"):しばしの停止、蓄えをつくるべき時
小畜(しょうちく="Small Accumulating"):しばしの停止、蓄えをつくるべき時。

構造の解説

上卦(Upper trigram)
「☴ 巽(そん:Xun)」="Ground":風・木・中に入り込む動き

下卦(Lower trigram)
「☰ 乾(けん:Qian)」="Force":天・始まりのエネルギー・男性原理・積極・能動的

64の「陰」が、五つの「陽」を集めてたくわえているが、状況はパワー不足、たくわえられた力はまだ発揮されない。

パワー充電していった場合、占う人の願いはかなうかもしれない。

実力があっても左遷されるような状況を表す。

卦辞(かじ=Explanation of the Hexagram)

「あなたの願いは実現する。雲が集まってきてはいるけど、まだなかなか待望の雨は降らない。今は、都の西の郊外で身を潜めていなさい。チャンスがくるのを待ちなさい。」

卦辞  小畜は、亨(とお)る。密雲して雨ふらず。我が西郊よりす。  (小畜、亨。密雲不雨。自我西郊。)

小畜(しょうちく="Small Accumulating")という卦(か=Hexagram)は、「中心人物」は四番目の位置にいる64です。

ここは本来、「陰(Yin)」が入るべき位置です。

 陰が陰位にいるので、64は正しい生き方をしています。

 64は、従順な性質で人に従う立場にいる人です。

 64は周りにいるの五つの陽に囲まれていますが、五つの陽はみな気が強いです。

 64の立場は弱く、この状況をコントロールするには力不足です。 

けれど、下卦(Lower trigram)は「☰ 乾(けん:Qian)」="Force"で、健全なパワーで上に昇っていこうとし、上卦(Upper trigram)は「☴ 巽(そん:Xun)」="Ground"で、従順さという美徳をもち、人の心にうまく入り込もうとします。

 昇ってくる力をうまく受け入れて、相手のふところに入り込むような従順な能力の持ち主、というのがこの小畜(しょうちく="Small Accumulating")という卦(か=Hexagram)のイメージです。 

これはいつかはいい意味での化学反応を起こし、恵みの雨をもたらす暗示があります。

 なので、占ってこのイメージが出れば、うまくいく、実現する可能性があるのです。

しかし、今の状況はまだ「力の蓄え」が不十分で、ちょうど雨雲が空を覆ってきてはいても、しかしまだ雨はふらない状態です。 

「都の西の郊外」というのは、易経では、うまく動けない時期にはおとなしくして力を蓄える、という意味合いがあります。


これは、古代中国の逸話に由来しています。

古代中国、殷の時代に、殷の属国の一つに周という小国があり、文王という君主が治めていました。 

大変なすぐれた君主でしたが、当時の殷の王は、紂王という暴君でした。この暴君は気に入らぬものをことごとく粛清しました。

文王は、この暴君の怒りに触れることがあり、罪もないのにとらえられて幽閉されてしまいます。 

文王が幽閉された場所が周の都の西の郊外でした。

なので易経においては、「都の西の郊外」とは、力があるものが不遇にも世に出られないで左遷を受けている、という状況を暗示するのによく使われます。 


小畜(しょうちく="Small Accumulating")という卦(か=Hexagram)は、元々いた地位から追われたり、役割を外されたりしてしばらく不遇な状況を我慢しなければならないイメージがあります。

 爻辞(こうじ=Explanation of the Lines)もその多くは、不運にも地位を追われたものが、元の地位に復帰するにはどうしたらいいか、という状況を書いています。 

「実力あるものが、とどめられて実力を発揮できない」というのがこの卦(か=Hexagram)のイメージです。 


占いの判断としては、あなたが今、なにか懸案のことを実行しようとしても、今は動きを止められてしまっている時期なので実行できません。

不本意かもしれませんが、チャンスがきて状況が動き出す時期を、あなたは当面は待つしかありません。

 不遇な状況の中でじっと待つのが「都の西の郊外」のイメージですね。 実際に左遷のような扱いを受ける場合もあるかもしれません。 

しかし、 待つというのも大事なことです。


周の文王は、幽閉をその後、解除されて周の君主に復帰します。 

幽閉時代に温めてきたアイデアを生かし、周の国力を増大させていきました。

次第に周は殷に対抗するほどの大国になっていきました。 

文王の息子、武王が殷を打倒し、新たな王朝を開くことになります。

ですがこうした周の繁栄は、文王が幽閉されていた「小畜(しょうちく="Small Accumulating")」の時期に蓄えたアイデアが元となっています。

 待ちながら、今はアイデアをめぐらし、もっと力を蓄えましょう。 

◇ひと言アドバイス(象)

今の自分のこと、これから先のことを考えよう

風が天に吹くのが小畜(しょうちく="Small Accumulating")。 

風は世界の気の動きです。実体がありません。 風はとどめておくことができないものです。 今の時期は、おとなしくして自分のなかに蓄えを作る時期です。 

君子はもって文章で徳を修める、とあります。 

この時期においてはあなたの考えをノートに書いてみるとか、本を読んだり映画を観たりしながら、今の自分自身のこと、これから先のことを考えるのです。

今は充電の時期だと考えるのがいいよ、ということです。 

それがチャンスが来たとき大いに役立つはずです。 


爻辞(こうじ=Explanation of the Lines)

小畜(しょうちく="Small Accumulating")
 6th:陽:上9(Upper9)
 5th:陽:95
 4th:陰:64
 3rd:陽:93
 2nd:陽:92
 1st:陽:初9(First9)

◇1st 陽 初9(First9)

「正しい道に従って元の場所に帰る。なんの問題もない。吉。もともとのあるべき処に帰るわけだから、大義もある」

初爻  初九、復(かえ)ること道よりす。何そそれ咎あらん。吉。  (初九、復自道。何其咎。吉。)

(※一番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)

この初9(=First9)は、下卦(Lower trigram)である「☰ 乾(けん:Qian)」="Force"の一番下ですが、一番目の位置は本来「陽」が入る場所なので、あなたは正しい立場にいます。 
下卦(Lower trigram)の「☰ 乾(けん:Qian)」="Force"は天であり、昇るエネルギーの象徴です。 
初9(=First9)は、このうちもっとも下にいるもの。 新人や若手を意味しています。
上へ昇っていこうとするのですが、途中に64がいて、それを「まあ、待て」と引き止めようとします。
 この卦(か=hexagram)のなかの一番目の位置と四番目の位置は「応じる」対応関係にあります。 懇意なので、最終的には64はこの初9(=The first9)が昇っていこうとするのを黙認します。
なので、初9(=The first9)は堂々と上昇し、本来いるべきはずの上の位置へと「帰る」ように昇っていくでしょう。 
占ってこの初9(=First9)が出た場合、占い手は、幹部候補生といったところ。 
まだ若くて経験不足だから、と少し上司にとどめられるかもしれませんが、順調に本来のつくべき地位に昇格できます。 
ただし、少し引き止められますから、その間は力を蓄えればいいでしょう。
 

◇2nd 陽 92 

「彼は正しい人と手をつないで本来の場所へと帰る。吉。彼は執着しないし、自分のなすべき役割を果たそうとするのだから、吉である」

二爻  九二、牽(ひ)いて復(かえ)る。吉。  (九二、牽復。吉。)

(※二番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。「中庸」を意味する場所。)

この爻(こう=Line)92もまた、下卦(Lower trigram)である「☰ 乾(けん:Qian)」="Force"の一部です。
なので、彼もまた元居た場所、あるいは本来あるべき地位に帰ろうとして上に昇っていきますが、やはり64に「待て」といわれそう。
でも92は、下卦(Lower trigram)の真ん中の、ニュートラルな位置にいます。なので彼は柔軟な対応ができます。
彼は仲間である初9(=First9)と仲良く手をつないで元のところへ戻っていくことができるでしょう。
この爻(こう=Line)が出た場合は、一人で本来の位置に向かうのではなく、仲間とともに行動するほうがよいでしょう。 
初9(=First9)は、年下や後輩を暗示しますが、こだわらず協力し合えば、本来の立場に戻ることができるでしょう。
 

◇3rd 陽 93

「車輪のスポークが外れて動けなくなってしまった車。夫婦喧嘩が起こり、対立する。これは正しい相手と家庭を築かなかった彼自身にその責任がある」

三爻  九三、輿(くるま)の輹(とこばしり)を説(と)く。夫妻反目す。  (九三、輿説輹。夫妻反目。)

(※三番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)

93もまた下卦(Lower trigram)である「☰ 乾(けん:Qian)」="Force"の一部だから、元の場所に復帰するため、上に昇ろうとしますが、この三番目の位置と対応する関係にあるのは上9(Upper9)です。93とおなじく上9(Upper9)も「陽」なので気が強いです。93が戻りたがっても上9(Upper9)は受け入れません。 
また93は「中」の位置(二番目と五番目の位置。柔軟なニュートラルな内面を示す)におらず、自己主張ばかりします。 
さて、そんな中、近くに64がたまたまいるので、93は64と関係をもってしまいます。
彼は不倫関係になってしまい、本来は元々いるはずの場所に戻るべく昇っていくべきなのに、浮気な相手に引っ掛かり、進めなくなってしまいます。 
この状況はあたかも、車輪のスポークが抜けて動けなくなってしまった車のようなものです。本来進んでいく性質なのにとどめられて進めませんので、93は今度は「不倫相手」の64(4th line 陰)のせいにしますので、喧嘩が起こります。
でも結局、本来は93の相手は上9(Upper9)のはずなのに、93が不倫などするからこんなことになってしまう・・・彼の自業自得です。
 

◇4th 陰 64

「あなたには誠実さと大義がある。害されたりする恐れはない。問題ない。目上の者も助けてくれるだろう」

四爻  六四、孚(まこと)あり。血(いたみ)が去り、惕(おそれ)出ず。咎なし。  (六四、有孚。血去惕出。无咎。)

(※四番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。)

さて、64はこの卦(か=Hexagram)の主役です。 
64は、陰ですが陰位にいるので、正しい在り方をしています。 
なにか、危機に陥ることがあるかもしれませんが、64は人を受け入れることができる人。
彼の上司や目上の人たちも目をかけてくれています。 
この卦(か=Hexagram)は、64以外の爻(こう=Line)はすべて陽ですので、彼は気が強い者たちに囲まれています。 
こうした状況だと危険がありそうですが、64は従順なので害されたりする心配はない、と易経は判断します。 
占う人、少し危ういと感じる状況があるかもしれませんが、なにも問題はありません。

◇5th 陽 95

「彼には誠実さと大義があり、周りの人たちと連携する。富を隣人と分かち合う。」

五爻  九五、孚(まこと)あり攣如(れんじょ)たり。富(とみ)その隣と以(とも)にす。  (九五、有孚攣如。富以其隣。)

(※五番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。「中庸」を意味し、君主を意味する場所。)

95は、上卦(=Upper triguram)の中心にいて、「中」の位置(こだわりないニュートラルで柔軟な性質を暗示)にいます。この位置は本来的に「陽」がいるべき場所だから、性質も立場も正しい君主です。 
彼の生き方は大義名分があり、中庸で正しいリーダーです。 
なので、両隣の上9(=Upper9)とも、64ともかたく手を握り合い、結束して仕事に当たります。
さて状況は、下卦(Lower trigram)である「☰ 乾(けん:Qian)」="Force"がものすごい勢いで昇ってきています。
これはあたかも、緊急事態が発生しているようなもの。 
ですが昇ってくるのは「陽」の群れである「☰ 乾(けん:Qian)」="Force"ですので、緊急事態であるとともに大きなチャンスです。
 95はエゴイストではありません。
彼には仲間とともに富を分け合う心がありますから、緊急事態でもみんなと力を合わせて乗り越えられるし、仲間とチャンスで手に入る利益を分かち合えるのです。 
なにか大きなチャンスが急にやってきます。
皆と恩恵を分かち合う、という視点で事に当たっていけば、あなたはいい具合で乗り切れますよ、ということです。
 

◇6th 陽 上9(Upper9)

「すでに雨が降り出していて、あなたは前に進むのをやめている。五つの陽は、一つの陰を尊重し、動きをやめ、その力はすでに極限に達した。あなたが女性ならば、貞節ではあるが危うい。空の月はすでに満月に近づいていて、近いうち今度は欠け始めるだろう。あなたが男性ならば、このまま目的に進もうとすれば凶である。」

上爻  上九、即(すで)に雨ふり即(すで)に処(お)る。徳を尚(たっ)とんで載(み)つ。婦貞(てい)なれども厲(あやう)し。月望(ぼう)に幾(ちか)し、君子征(ゆ)けば凶。  (上九、即雨即処。尚徳載。婦貞厲。月幾望、君子征凶。)

(※六番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。属性がない場所。)

さて、この爻(こう=Line)は、雨雲が集まってこれまで雨が降らなかったのでしたが、とどめる力が極点に達して雨が降り出しました。
 これは、五つの陽が64に従ったからでありますが、本来は進んでいく性質の陽の力は六四の陰と中和して、状況は一変したのです。
 今度はこれまで力が弱かった陰が、すべてを支配するようになります。 
もう極限状態に入ってしまったのが上9(=Upper9)。 
女性である陰の力が増大したことは、この状況では当然ですけれど、これはたとえば妻が夫に対してわがままを言い出すような状況、危ういものがあります。
問うている人が女性であるならば、女の支配欲で危険な状況になっていることを易経は警告します。
今の状況は天空の月でいうならば、満月が近い。 
満月になれば今度は月は欠けていきます。 
今現在はいいように見えても、それはすでに暗転がせまっています。
易経に問うのが君子ならば、あなたがこのまま進もうとすれば、凶、えらい目に遭うよ、できれば冷静になって考え直したらどうなの? というのがこの爻(こう=Line)の判断です。

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